2023年4月25日

エアムーブ工法誕生物語

oo.pngエアムーブ工法が生まれたのは1991年のこと。今では当たり前ですが、当時は住宅業界の非常識と言われていた「冬暖かく、夏涼しい家」を求めて生まれたのがエアムーブ工法です。

90年代は高性能住宅の黎明期。多くの住宅会社は「冬暖かく」を実現するために、壁の中に断熱材を取り入れ始めた頃でした。
しかし、この頃は、知識も施工技術も乏しく、高温多湿な日本では、断熱材が原因で壁の中が結露をして柱や土台といった構造体が腐食するようなことが当たり前に起こり社会問題になっていました。
住宅性能を高くすると快適ではあるが、その反面、建物の寿命を短くしてしまうというのが当時の常識だったのです。


pp.png富岡製糸場でも採用されている
養蚕農家住宅のしくみがヒントに

「どうにか冬暖かくて、夏涼しい家を実現できないだろうか?」
そんなとき、創業者が着目したのは富岡製糸場でも採用されている養蚕農家住宅の仕組みでした。
今では世界遺産に登録されているように、高温多湿な日本の環境でも現存している長寿命木造住宅の一つなのです。
その仕組みは、屋根の上にもう一つ換気の為の小さな屋根があり、気温の変化に応じて換気調整を行います。風通しが良く湿気が籠らないので夏は涼しく、柱や土台などの構造体にも大変良い環境です。
しかし、このしくみには弱点がありました。「夏涼しく、冬寒い」のです。


qq.png空気が動くという考え方欠点をいかに解消するか?

冬暖かくするには、やはり断熱材を取り入れるしかありません。
しかしそうすると壁の中に結露が起こり構造体である柱や土台を腐らせてしまう。
それならば柱の外側に張るしか方法はないのか?
そんな思いを巡らせている時に創業者が出会ったのがある通気システム工法でした。
この工法は、外張り断熱で壁の中や天井裏の空気を循環させ夏冬を快適にするというものでした。しかし体験してみると期待どおりの快適さではない。

そこで床下にスモークマシンで煙をたいて空気がどんなふうに流れるかを実験してみたところ煙は床下に留まり空気はあまり循環していないことがわかりました。
また、外張り断熱は、構造体の外に断熱材を貼るため、地震による外壁材が剥がれ落下することが問題視されていました。
「自然の力を使って空気を休みなく循環させ、冬暖かく、夏涼しい住まいを実現したい」


rr.png群馬の地に適した断熱性に
優れ空気を動かすオリジナル工法の完成

その想いのもと、創業者は東京大学などの研究機関をはじめ、たくさんの人たちの協力を得ながら独自で工法開発を進め、完成したのがエアムーブ工法です。
日照時間の長い群馬県の特性を活かした、太陽の熱を取り入れるしくみ。
そして、床下の給気口と棟の換気口を夏開けて排熱するしくみ。

群馬県古来の養蚕農家住宅から生まれた、機械に頼らない、この地域に最も適した工法。
それがエアムーブ工法なのです。

SDGsへの取組

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いち早く家づくりから環境問題に取り組んだ私たちだからできること
エアムーブ住宅では、早くから環境問題に着目し、電力やCO2を発生する化石燃料を極力使うことなく、自然エネルギーを使う事で夏涼しく冬暖かい快適な住環境を作り出しました。その結果が工法初のグッドデザイン賞です。これからも持続可能な世界を実現するため、SDGsの考え方に賛同し、以下の取組を続けていきます。

SDGsとは?
持続可能な開発目標(SDGs)とは、持続可能な世界を実現するための17の目標です。
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111.png3.すべての人に健康と福祉を
暖かい家が健康に暮らす秘訣です。自然エネルギーを循環させ家中どこでも暖かいエアムーブ住宅は、そこに住まうご家族がいつまでも健康に暮らしていただける家づくりをしています。
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222.png11.住み続けられるまちづくりを
エアムーブ住宅は躯体内の空気を自然の力で動かすことで常に木材(柱や梁)を適度に乾燥させています。建物劣化の原因となる湿気をこもらせません。その結果、丈夫で長持ちする耐久性の高い、いつまでも安心して住み続けられる家づくりをしています。
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333png.png13.気候変動に具体的な対策を
最近の異常な夏の暑さに対してエアムーブ住宅は、床下と棟を使い、自然の力をうまく利用して室内の熱と湿気をどんどん家の外へ排出します。暑い夏もエアコンに頼り過ぎない自然な涼しさを感じられる健康的な家づくりをしています。

エアムーブを活かす素材

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群馬の高温多湿な気候
工法に適した素材でつくる

エアムーブ住宅では、群馬県の高温多湿な気候と、エアムーブ工法の効果を最大限に高めるために下記の素材を推奨しています。エアムーブ工法の特徴は、温度差によって空気を自在に操ること。より空気が動きやすいように、独自の考え方で素材も選んでいます。

dd.png外装材:
ガルバリウム鋼板

一般的に耐久性と軽量性で採用されているガルバリウム。私たちは「集熱効果が高いため」採用しています。エアムーブ工法では外装材の下の空気層で冬は集熱した熱を室内へと運び家全体を温めます、また夏はこの温まった空気の上昇を利用し床下の冷気を家全体へと運びます。併せて暖かい空気は室内にある湿気を引きつれ棟の部分で換気され、湿度を下げる役割を果たすのです。

ee.png基礎:
断熱性に優れた耐震基礎

基礎の外側と内側を断熱材で包むことで床下に断熱性の高い空間をつくり出し、太陽熱や地熱という自然エネルギーを活用でき、足元が快適で家中の温度差が少ない室内環境を生み出します。
また、一般的な基礎とは違い、耐圧盤と立ち上りコンクリートが一体化しているため、継ぎ目がなく耐震性に優れた基礎です。万全なシロアリ対策も施されています。

ff.png床材:
無垢床材

エアムーブ工法では冬は集熱した熱気を床下や壁の中に取り入れます。このため自然の温かさが得られ、スリッパ等がなくても温かい床を実現します。夏も床下が涼しいことから床材も床自体もひんやりします。ですので、私たちは素足での暮らしをおすすめしています!

gg.png内壁・天井:
漆喰

VOC(有害化学物質)の吸着・分解、調湿効果、においを軽減してくれる日本伝統の素材です。火に強く、アルカリ性でカビが発生しずらく、音が通りにくいなど、機能性も抜群な漆喰。パッシブな暮らしでは欠かせない材料です。

hh.png窓:
Low-eガス入りアルミ樹脂複合サッシ

夏は熱の侵入の7割、冬の熱気が逃げる5割が窓といわれています。樹脂はアルミと比較するとかなり断熱性能に優れている素材です。熱伝導率が低く、冬場の窓枠部分を触ってもヒヤッとすることがなく、結露の発生も抑えることができます。もちろん熱戦防止のLow-e仕様、アルゴンガス入りのガラスを採用しています。

ii.png柱:
ヒノキ

構造体に用いる柱は、シロアリに強いヒノキを採用しています。壁の中を空気が走るエアムーブ工法の特性上、柱が防蟻処理されていると、その薬剤を空気と一緒に室内に拡散させてしまうことになってしまいます。ヒノキは天然の忌避効果のあるヒノキチオールが含まれており、シロアリだけでなく、ダニ、ゴキブリにも効果を発揮し、人には森林にいるような香りがあり癒やし効果を与えます。

jj.pngパーツひとつひとつが
特許取得性能実験で証明された快適さ

エアムーブ工法は、パーツひとつひとつが特許を取得。「エアムーブ」の家は、私たちにしかつくれません!また品質は、東京大学や早稲田大学など、建築学の研究チームと共同で性能測定実験をおこない、データによっても快適さを実証しています。


エアムーブ工法は、家の周囲に多く存在する自然エネルギーを最大限活用し、夏は日射を利用し家を冷やし、冬は夜の冷気を利用し昼得た暖気で家を温める事で冷暖房エネルギー消費を抑える工法です。基礎・外壁・屋根を断熱材で一体化し、その断熱材の内側と外側に2系統の空気の流れを作り出します。そしてその流れの中に季節に応じ気流をコントロールする逆止弁を配置。その弁は環境変化に応答し空気の流れで動作し適正な住環境を作ります。この事により同一の断熱性能の住宅に比べ夏3〜5度低く、冬は3度室温が高い室内空間を作り出しているのです。

エアムーブを活かす設計

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空気を味方にするエアムーブ工法を最大限に発揮する設計のチカラ

私たちが提案する間取りは、エアムーブ工法を最大限に活かしつつ、家族のコミュニケーションも考えた開放的な空間。空間を全体的にゆったり取ることで、空気の流れを作り、家族みんなが孤立することなく繋がる間取りを提案します。高気密・高断熱性、そしてエネルギー消費を抑えたエアムーブ工法だからこそ可能な設計なんです。

エアムーブ工法を最大化する
7つの設計作法

11.png作法 1
廊下をなくす発想

廊下は間取り全体の面積を狭くし、風通しや陽あたりを悪くし、住まいの中に冷たい部分をつくってしまいます。さらに家族のつながりを弱くしてしまいます。そのため、エアムーブ住宅ではできる限り「廊下をなくす」間取りをご提案しています。

22.png作法 2
引き戸を開けて使う

扉は基本的には引き戸を用います。また、閉めることを前提とせず、普段は開けっ放しで人だけでなく、空気の通り道として風が流れる設計しています。また引き戸は、開き戸に比べて指を挟んだりと怪我のリスクも少ない利点があります。

33.png作法 3
リビングには吹き抜け

吹き抜けをリビングに設けます。家族の暮らしの中心であるリビング。2階と空間的につながることで、家族のさりげないふれあいが生まれます。吹き抜けはリビングンに開放感と光をもたらすとともに、縦方向の空気の流れを生み出します。これがエアムーブ工法の強みである換気の効率をUPさせ、年中快適に暮らすためのポイントにもなります。

44.png作法 4
大きな窓に軒やひさしを

南側の窓はできる限り大きくとり、日光の暖かさを室内に取り入れます。ただ大きくするだけで快適とは言えません。軒やひさしを設けることで夏は陽射しを遮り、冬は陽射しを取り入れます。昔から受け継がれてきた伝統的な省エネのための工夫「よしず」を現代の感覚でよみがえらせました。

55.png作法 5
風除室を兼ねる土間空間

日本の伝統的な住まいの中で、家の内と外をつなぐ空間として機能していた土間空間。そこに風除室の役割を持たせ、玄関の開け閉めによる温度変化を防ぎます。単なる風除室ではなく、セミオープンスペースとして広く設けることで、趣味の場だったり、来客スペースだったりと自由な発想で使うことも出来ますよ!

66.png作法 6
集熱効果をもたらす三角屋根

エアムーブ工法は空気の温度差を操ることで四季によって快適な空間を実現しています。その中でも屋根面は「集熱」の役割があり、冬は屋根で集めた熱を建物に行き渡らせ快適な空間をもたらし、夏は集熱効果が湿気や床下冷気を屋根まで引き上げ、室内を快適にします。
そのため、屋根は集熱効果が最大化するシンプルな三角屋根を採用しています。

77.png作法 7
南の庭には落葉樹

軒やひさしで夏の強い陽射しを遮りますが、更に効果を高めるために、南に庭が取れる場合は落葉樹をご提案しています。夏は茂った葉が強い日差しを遮り、心地の良い木陰を作ります。冬は葉が落ちて日の入りを邪魔しません。四季を感じるとともに快適さをもたらす工夫です。

自然の力で年中快適構造

a.png太陽の恵みに包まれる心地よさ、
住む喜びを全身で感じるすまい。

太陽の恵みを家の中に取り込んで、身体にも地球にもやさしい"自然な暖かさ"と"自然な涼しさ"を部屋の隅々にまで行き渡らせます。1年365日、朝目覚めたとき、みんなでご飯を食べるとき、外から帰って来たとき、子供たちを寝かしつけるとき、そして眠っている間まで、すべての暮らしのなかで快適性を感じていただけます。
b.png冬のエアムーブ住宅
屋根裏や床下までしっかり"家まるごと断熱"。家中どこにいても、やわらかな暖かさ。外は寒くても、家の中は暖かい。エアムーブ住宅は太陽の熱で空気を循環させ、家全体を均一な暖かさで包みます。

エアムーブ住宅の家まるごと断熱
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e.png夏のエアムーブ住宅
家を涼しくするには、熱と湿気を家の中から追い出すこと。 "家まるごと換気"なら、「暑さ」がどんどん外に出ていく。熱をもった空気を外に出し、冷えた空気を取り入れ続ける。だから、冷房を使わなくても、家の中を涼しい空気が流れます。

エアムーブ住宅の換気
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h.png梅雨のエアムーブ住宅
ジメジメした不快感を"家まるごと換気"で解消。雨が降り続く梅雨でも、家の中はカラッと爽やか。梅雨どきを快適に過ごせるかどうかは、住まい選びの重要ポイント。エアムーブ住宅は、熱と湿気を一緒に逃がすので、家の中は除湿器いらずの爽やかさです。
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エアムーブ工法とは

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夏涼しく冬暖かい
「衣替え」のできる家

エアムーブ住宅はパッシブを味方につけた、シンプルだけどスゴイ「自然の空調を取りれた高気密・高断熱住宅」です。太陽熱と空気を自在に操り、夏はこもった空気を逃し、冬は暖かい空気を取り込むことを実現しました。それを可能にしているのが、建物に設けられた給気口と排気口。これによって一般住宅では実現できない、季節によって「衣替え」のできる家になっているのです。


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季節のある日本

冬、古い家はとても寒く、健康にも決して良いとは言えないものでした。その寒さに対して出来たのが、サッシや断熱材を使用した、現代の高気密・高断熱な住宅。しかしその結果、高い気密性と断熱性によって結露が発生し、カビなどの健康を害する結果にもつながってしまいました。さらに、夏には家の中がとても暑く多湿となり、熱中症などを予防するために、常にエアコンを使用しなければならないなど、多くの問題が出てきました。


2.png夏も冬も24時間・365日、電力を使用

現代の高気密・高断熱な住宅は、機械によって管理しなければならず、光熱費がかさみ、環境にも良いとはいえない状況を生むことになってしまったのです。

3.png自然の力を利用して
空気を動かします

家の基礎部分に給気口、空気層のできる壁内にある逆止弁、屋根部分に排気を促す棟換気扇、棟カバーを取り付けます。これらの独自部材を使用し、家全体の空気の流れをつくり、自然の力で空気を動かすサイクルをつくり続けます。


4.png住宅工法で初めて
「グッドデザイン賞」を受賞!

何もかもゼロから開発したエアムーブ工法は、地道な検証を繰り返して、その快適性を科学的に証明。東京大学や早稲田大学との共同実験・検証を行い、数値によって快適性を証明しました。2012年度には住宅工法として初めて「グッドデザイン賞」を受賞。未来を示唆するデザインとして「グッドデザイン・ベスト100」、特別賞の「グッドデザイン・ものづくりデザイン賞」にも選ばれています。


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